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【トレイルランナー】上田瑠偉さん④

 < 第4話 >

上田瑠偉<第3話>を読む


上田瑠偉が佐久長聖高校へ進学することを決めた年に、佐久長聖高校は前年の同タイム2位の屈辱を晴らし日本高校記録で優勝した。上田自身もその強豪校の一員として日本一を目指すことは漠然とした夢ではなく、現実的な目標として高校へ進学した。

佐久長聖高校に入学した上田は、同級生と自分たちの代でも全国制覇をしようと誓い合ったという。そして、上田は非常に厳しい練習や寮生活に負けて逃げ出さないようにと学年責任者に立候補しその責務についた。その時のことを上田はこう語った。

「絶対に3年間頑張りたかったので、逃げ場をなくしたかったのです。」

上田にそこまで強い決意を抱かせたのは、全国都道府県対抗駅伝上田さん9_top.jpg
で味わった優勝の感動を再び味わいたいというアスリートの本能と、サッカーと陸上のどちらに進むかを迷っていた自分に対して背中を押してくれた父親への感謝、そして自分を強豪校へ誘ってくれた両角監督と高見澤コーチ(いずれも当時)の期待に応えたいという気持ちからであったのだろう。

この時は順風満帆で、希望に満ちた陸上生活がずっと続くことを上田は疑いもしなかったが、様々な試練が待ち構えていたのだ。

中学時代まではサッカーがメインであり、陸上は体力作りのためにしていた上田は故障知らずであったが、全国屈指の強豪校である佐久長聖高校の練習は質・量とも非常に高く、上田は入学した年に貧血、腸頸靱帯炎などにより継続的に練習を積み重ねていくことができなかった。一緒に入った同級生が順調に記録を大きく伸ばしていく中で、中学時代の自分を超えることもできないばかりか、満足に走ることができない上田は何度か辞めようと思ったことがあるという。しかし、上田は学年責任者という肩書きがあることから辞めるなんて無責任なことはできない。もう少し頑張ってみようと踏みとどまったのだ。彼は当時のことを振り返った。

「都道府県対抗駅伝であれだけ走れたのだから自分に走る力があることは間違いない。貧血や故障さえ克服すれば走れるはずと信じてできることをしました。また、学年責任者に立候補して選んでもらったのだから途中で投げ出すなんて絶対にできませんでした。」

しかし、試練はその後も続いた。2年時には異なる時期に左右両足の脛骨を疲労骨折してしまったのだ。相次ぐ故障で走ることができない苦しさを感じながらも、寮生活に慣れてきた上田は「チームのために自分に何ができるか」を考えるようになったという。3年時にようやく継続して練習を積めるようになってきたが、5000mの自己ベストは16分01秒08であった。トップクラスの高校生なら13分台を出すのは珍しくないこと、そして上田の中学時代の活躍を考えると本人の苦悩は大変なものであっただろう。

そんな逆境に置かれても、自分を見失わずにチームのために何ができるかを常に考えていたというのだから言葉にできない。上田は故障で走れない時には以下のような練習を徹底的にしていたという。

 ・エアロバイク60分×3セット
 ・5
0分間泳2セットや50mクロールインターバル
 ・
2時間補強
 ・
近くの平尾山で4時間ウォーク

この時の平尾山4時間ウォークは全国レベルのチームメイトが誰もついてこれないほどの速さだったという。走ることができない自分に腐ることなく、その時できる練習を徹底的にしたことが、トレイルランナー上田瑠偉のベースになっているのは間違いない事実であろう。

3年時にキャプテンになった上田は都大路を走ることはできなかった。そしてチームも過去最低順位に終わった。その時のことを上田はこう振り返った。

上田さん10.jpg「最終学年の都大路は過去ワーストタイムとワースト順位でした。僕自身は補欠にも入れなかったがキャプテンとしてチームを作れなかったこと、入学時の『日本一』の目標に遠く及ばない結果に終わってしまったことが、非常に悔しかった。キャプテンとして、注意したり怒ったりすることもあったが、競技力のない自分が何を言っても説得力がなく、どう伝えれば良いのか葛藤することもあった。

最後の都大路を終え、『この悔しさを忘れずに、大学に入って、社会人になって、競技でも仕事でも、いつか見返すんだという気持ちをずっと持って欲しい。』という言葉を高見澤監督から頂いたのをその時から常に忘れずにいます。」

上田が話した"競技力のない自分が何を言っても説得力がなく、どう伝えれば良いのか葛藤することがあった"という件は、聞いていて胸が締め付けられる思いであった。しかし、この時の悔しさや葛藤を糧に上田は強くなってきたはずだ。

上田にとっての高校時代は、故障を繰り返し、一度も中学時代の自分を超えることができず、競技者としては非常に悔しい3年間であっただろうが、精神面では大きく成長することができた3年間であったのだろう。

< 第5話へつづく >

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