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弛むことなき旅路の果て 吉田香織に送るレクイエム⑭

yoshiada_title_1.jpgのサムネイル画像<第11話 ②> 分かち合う世界


振り絞る"新しい力"

吉田には「山のトレーニングで養われた強い筋肉と心肺機能」「洗練されたダイナミックなフォーム」「研ぎ澄まされた感性」「強いられた挫折を乗り越えてきた強靭な精神」、さらには、「吉田を支えるたくさんの仲間」が宿っている。備わる能力は、心身ともに高いレベルに到達していたに違いない。苦節15年で蓄えた人間力が発揮される時が訪れた。

yoshida61.jpg39kmで7戦4勝の強者ランナーを捉え、2位に上がる。

踏み入れた新しい世界

苦しいけれど、何故か気分が良い。途切れない声援に包まれた不思議な空間に吉田はいる。心地よくリズムを奏でる心臓の鼓動と吐き出す呼吸音。そのリズムに合わせて躍動する筋肉。全てが響鳴するかのような走りができた確かな実感があった。そんな感覚に酔いしれながら歓喜のゴールに飛び込んだ。

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第2位、日本人トップ 2時間28分42秒 1分以上の自己記録更新

ゴールに飛び込んだ瞬間、結果を喜ぶよりも先に、新しい世界に飛び込んだような感覚が何よりも嬉しかった。私たちが求める"もの"が何となく見えた。全てと分かち合えたような気がした。

吉田が、悟りを開いたような表情でゴールした理由がやっとわかった。

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周囲のフィーバー

終わって発表された女子の完走率には驚かされる。"56.2%"という信じられない数字だ。男子のほうも、優勝した実業団選手を一人除くと、2時間20分台の記録を有するランナーが何人もいる中で、2時間30分を切った男子ランナーは一人もいなかった。ひじょうに過酷なマラソンであったことの裏付けであろう。

ゴール後に、吉木社長や打越コーチと歓喜の抱擁。感涙は当人たちだけではない。吉田の苦労を知る人の皆が涙を流したことだろう。「埼玉の人たちに、私は元気で走っていることを伝えたかった」とインタビューで話す吉田の姿に多くの人が感極まり、ランナーズパルスのブログは、アクセス集中でパンクする。SNSで飛び交う様々な言葉。毎度のことだが、オリンピック選考会のあり方までにも議論が及ぶ。


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「夢を諦めた天才少女が、時を経て、市民ランナーの代表として再び夢を追いかけ始めた」というキャッチフレーズも世間を熱くする要因かもしれない。しかし、こんなフィーバーも時の流れとともに、鎮まっていくことだろう。そして、やがて、徒然なる話題になってしまう。そう思うと何となく寂しいが、それは世の常。しかし、この物語は、これからも続くのだ。

始まる新たなストーリー

その続きが、オリンピックのストーリーとなるかは、今後(選考会)の展開に委ねられる。打越コーチの計算通りならば、(オリンピックとは関係ないところでも)吉田の飛躍は間違いなくなされる。安住の地を求めた渡り鳥の旅は、まだ終わらない "果てしなさ" を呈しているように思える。新しい境地を開いた吉田香織の視線は、今まさに、さらなる高みへと注がれ始めたのだから。

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小さな渡り鳥が高く舞い上がる。次に向かう地は、果たして何処になるのだろうか。

愛くるしい小さな顔、華奢で細いカラダに不釣り合いとも言える大きな翼を広げ始めた吉田。「その "ギャップ" で観る者をいつまでも魅了し続けてほしい」 それが皆が想う願いである。

-続く-

<第11話> ① 心の木霊 ② 分かち合う世界


<最終話> 奇跡ではない必然

<第1話>から読む

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