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弛むことなき旅路の果て 吉田香織に送るレクイエム⑪

yoshiada_title_1.jpgのサムネイル画像<第9話> 吉田香織の再生のとき


自然の中で

いよいよ埼玉国際マラソンに向けたトレーニングが始まる。

噂では、アップダウンの激しいコースらしい。地元だし、何となく想像はできたが、実際に試走してみると、確かに大変なコース設定だった。それからは、春から取り入れてきた山道トレーニングを増やした。

毎週のように山へ走りに出かけ、脚作りを徹底的に行った。常識的なロードでの距離走は減らす
。打越コーチの方針でもあるが、吉田は、この山のトレーニングが好きだった。


yoshidauchikoshi_2.jpg綺麗に舗装された道路とは違う。「一度として同じ角度や傾斜はないのではないか」という山岳道。時には、走ることさえできない急斜面や岩場に向かうとき、全身を使っている感覚がある。

走っている時は苦しく、景色を楽しむ余裕はないが、要所で休む際に目の前に現れる風景は、苦しさを忘れさせる爽快感がある。澄んだ空気を吸い込むほどに、内部で換気が行われ、入れ替わりに自分の中に溜まる毒を吐き出せているような気がしてくる。心が洗われるようだった。

IMG_5215.JPG自分が"生き物である"ことを味わえる時間は、自分の鮮度が増し、失われた感性を呼び戻すかのようで、身体が喜んでいるような気持ちになれる。何とも心地良い。

仲間に教えられること

同じように、山道でトレーニングするランナーに出会う。「こんにちは!」「足元に気をつけてくださいね!」「どこまで走るのですか?」自然と言葉が出る。お互いが生き生きとした顔ですれ違う瞬間は、この世界を共有する仲間に思えてくる。

昨秋から出会った各ランニングクラブの仲間の顔が浮かぶ。「皆、どうして頑張れるのだろう」「仕事で疲れているはずなのに・・・」

IMG_5185.JPGのサムネイル画像実業団チームで走っている頃は、練習が辛いときもあった。鉛のように重い脚を前に出すことにエネルギーを使うことさえある。「その一歩を踏み出せば走ることができる」ことがわかっていながら、「走りたくない」と思う自分が出現する。そんなことは幾度となくあった。

好きなランニングが、時には苦痛になるのだ。
そんな苦痛になるトレーニングをランナーの人たちは、仕事の後に実施している。その気持ちを、過去の吉田には理解不能だったことだろう。

しかし、今は違う。「それぞれの人に、それぞれのランニングがある」ことを知っている。出会った仲間が教えてくれた。

「ランニングを通した生き方」ランニングのイベントや飲み会のコミュニケーションの場で、それぞれが熱く語る"想い"。多様な価値観があることを思い知らされた。「速い遅いじゃない」「自分の"軸"が大切なのだ」と。「"人"って凄いな!」単純にそう思った。「思い込み」や「一つの価値観に縛られていた」自分自身が恥ずかしくなったこともあった。

そう吉田は、開眼したのだ。

自分らしい走り

それからは、迷いがなくなった。「自分を表現するために走ろう」

そう考えると、どんどんトレーニングは楽しくなっていった。「記録を出す前に、自分らしく走ろう」

それを象徴するかのように、吉田が好む山道のトレーニングをするほどに、身体の使い方が上手になっていった。荒削りなフォームが改善されていく。すると、スピード練習が楽になる。好循環の始まりだ!

少ない練習でも、十分なトレーニング効果が生まれるようになる。これもまた、偶然という名の必然なのかもしれない。

yoshida_11.jpg「さいたま国際マラソン前に走ったのは最長30km」しかも、30kmを走ったのは、たったの一度。トップアスリートのマラソン競技では、おおよそ常識ではない事実がそれを証明している。実業団スポーツの世界では、非常識なほどに少ない練習なのだ。そんな「驚きの事実」を当然のことのように話す吉田。人は変われるのだ。

変わる自分 変える自分

何かが変わるためには、成功ばかりでは難しいのではないだろうか。吉田のインタビューを通して、そんなことを教えられる。

失敗が続くと自問自答が始まる。そして何かを求め出す。求めた先で「自分が変われる"きっかけ"に出会えるか?」「出会えたとして、その"きっかけ"から、自分を変えるために何を掴むのか?」がポイントになる。

IMG_5233.JPG結果を出そうとするほどに視野が狭くなる。その結果、自分を苦しめることになる。そういうことを、吉田は、一度、競技から離れ、ニュートラルな状態になったからこそ気づくことができた。


"人生は、後退しているようで、前進している" 


そんなことは、問題(挫折)の渦中にあるときは、客観視できない自分自身には気づけないもの。それを「気づかせてくれる人」「コントロールしてくれる人」に、出会えるかが運命の分岐点となるような気がしてならない。


各ランニングクラブの仲間、飲み仲間、吉木社長、打越コーチ・・・出会いから始まる"自分自身の再生(生まれ変わり)" つまりは、飛躍。


案外、吉田は強運の持ち主なのかもしれない!

と思うわけである


-続く-

<第10話> "想い"を乗せた走り


<第1話>から読む

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