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弛むことなき旅路の果て 吉田香織に送るレクイエム➈

yoshiada_title_1.jpgのサムネイル画像<第7話> 命運を分ける針の傾き


ポジティブな流れの始まり

ソウル国際マラソンで競技スポーツに復帰すると、「この舞台こそが私の生きる世界」とばかりに、吉田は、活発に動き出す。イベントを企画しては、次々と開催していく。仕事で人に会い、各クラブの練習会で走り、懇親会にも積極的に参加する。そこには、創芸社に入社して以来"変わらぬ吉田香織"がいる。

yoshida_44.jpgその一方で、勇気ある一歩を踏み出した吉田の歩調に合わせるように、流れは確実に変わっていた。暗雲の切れ目から光が差し始める。ポジティブに生きようとする吉田のパワーに引き寄せられるかのように、吉田の周りに人が集まるようになってくる(いや、人が集まるところに吉田が行っている、とも言えるだろうか)。ポジティブに生きる人間に、運命はポジティブに動き出すのかもしれない。

それを象徴する大きな巡り合わせがやってくることになる。ソウル国際マラソンが終わって間もない2015年3月末のこと。第二の"運命の出会い"が訪れる。もちろん、打越氏との出会いである。

運命の言葉


yoshida_uchikoshi_1.jpg吉田と打越が最初に出会ったのは、2014年の5月。その時は、暗がりの競技場で挨拶を交わしただけ。それ以来、一度も会うことはなかった。それが、ソウル国際マラソンの後の3月末、バーベキューで再会するのは、運気の流れが変わったことを意味するような気がしてならない。その再会の時に、打越は、"命運を分ける言葉"を吉田に発するのだ。

「世界で戦える走りができるよ!」

吉田がランナー仲間を誘ってバーベキューをした時のことだった。仲間が打越にバーベキューの誘いの電話をかけたのだ。バーベキューの前に、翌日に出場するハーフマラソンの調整練習をすることになっていた吉田は、その電話を奪い、「1kmを走るので、打越さん私の走りを見てください」とお願いしてみたことが発端。打越は、吉田の走りを見るために、わざわざ自転車に乗って来てくれた。

打越は、自転車で後に付き、走る吉田を追いながら、写真やビデオを撮り、じっくりと観察した。「今どき、こんなにダイナミックな走りをする女子選手がまだいるんだ!」と驚く。その走りを見たときの第一印象がかなり強烈で、上記の言葉が飛び出したというわけだ。インタビューでも、「そんなことを言った覚えがある」という程度の記憶に過ぎず、自然と発せられた言葉だったのだ。

自転車で現れたオジさんの印象

吉田は「"世界で戦える"なんて、この人、いきなり何をそんな次元で話すの?」と"ありがたい言葉だ"と受けとめるよりも、不思議に思う感情が優っていた。

そりゃあ、そうだろう。昨年、挨拶を交わしただけなので、バーベキューで再会する時点でも、まだ、お互い「強い選手だったんだ」という程度の認識しかない。不思議に思うのは当たり前だ。打越は、吉田の競技実績も過去も知らないし、一方の吉田も、打越の競技実績も指導者実績も何も知らないのだから。まあ、当然の反応だろう。

yoshida_uchikoshi_6.jpg打越は、吉田の走りを見ただけで、バーベキューには参加せずに帰っていった。「当然、バーベキューにも参加してくれる」と思っていただけに、「わざわざ私のために来てくれたわけ?」それも意外な感じがした。

気になった吉田は、仲間に打越のことを尋ね、初めて打越の実績を聞く。「へぇ~そんな凄い人だったんだ」と驚くと同時に、「なんて奇特な人だ」と思った。さらに「心から陸上競技が好きな方なんだろうな」と自転車に乗ってやって来たオジさんの姿を頭に思い浮かべながら、漠然とそう感じた。吉田は、ニヤニヤしてしまうことを抑えられない。

仲間入り

こんな経緯があって、その後、打越が指導するグループ(アラタプロジェクトのメンバーである「サイラスジュイ」や「宮田越」、100kmマラソンの元日本代表で産業医の「清本」ら)の練習に混ぜてもらうことになるのだ。流れに身を委ねるように、レベルの高いランニング仲間の一員に加入。それが、打越が吉田のコーチを務めることになる始まりだった。

yoshida_uchikoshi_3.jpg振り返ると、バーベキューでの再会にあたっての伏線はあった。板橋シティハーフで優勝したランナー清本の祝勝会に、吉田が出席したときのこと。清本が打越の指導を受けていることを知る。「彩湖を拠点に練習しているから、今度おいでよ!」と清本に誘われ、お酒に酔った勢いで、深夜にも関わらず清本の携帯電話から打越に電話している。「今度練習に行くのでお願いしまーす!」と軽い乗りで話していたのだ

偶然に見える必然

「初対面」から10ヶ月後に再会するまでの間に、「伏線」があり、「陸上好きのオジさんが自転車に乗って現れる」「そのオジさんは"世界で戦える"と驚きの発言をする」「そのオジさんの正体を知る」、そして、「そのオジさんが指導するグループに加入」していく。そうした、"点"が"線"で結ばれていく様は、偶然に偶然を重ねているようにしか見えないのだが、偶然にしては出来過ぎだ。必然なのだろうか。

トップアスリートには、当然ながら、指導者が必要になる。エリート街道を再び歩むことを決意した吉田には、そんな願望が芽生えるに決まっている。そういう思いがあるから繋がっていったのだろう。指導者が欲しい吉田に、偶然空いていた元世界陸上男子マラソン5位入賞の打越が指導する"席"が用意される。そういう意味では、必然なのかもしれない。

偶然にも必然にも、運不運がある。もし、出会った指導者が「打越ではなかったら・・・」。運命は、違った方向に進んでいくのだから。

yoshida_uchikoshi_7.jpg結果的に打越がコーチをすることで、成績が上がるわけだが、「違う人が指導したら、どうだったか?」という問いに答えることは永遠にできない。ただ、言えることは、好結果が伴ったのだから「明暗を分ける針が幸運という側に傾き始めたことは間違いない」ということである。

幸運という飛行ルートに偶然にも乗り始めた渡り鳥・吉田は、羽ばたく力を強めていくのだった!

-続く-

<第8話> 歩み寄った相性 築く共生


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