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弛むことなき旅路の果て 吉田香織に送るレクイエム➅

yoshiada_title_1.jpgのサムネイル画像<第5話> どん底からの再生


助演女優のとき

"苦節"と表現したくなる過去の部分を、記憶を辿りながら、そして、言葉を選びながら話してくれた吉田。その表情は、時折、苦悶の色を見せる。「嫌なことを思い出させてしまったかな」と思った瞬間、「過去なんて、もうどうでもいいことなんですけどね」と笑って付け加える。

yoshida42.jpgそう、吉田は人の顔色を窺い、瞬時に反応した。それを見て、何となく思った憶測がある。もしかして、こうやって、所属チームでも、「自分の思いとは裏腹な言動をしてきたのではないか」と。

思い浮かぶのは、「自分を抑え込んだ優等生として振る舞う」吉田の姿。自分が中心とならないチームでは、仕方ないことなのか。いや、違う吉田もイメージできる。若い頃は、思い通りにいかないと「反抗する不良を装った」のかもしれないな、と。小悪魔的なところがあるように見えるので、後者だったのかなと思わなくもない。いづれにしても、助演女優の精一杯の演技でしかなかったはずだ。直感的にそう感じた。

活きる助演の経験

そんな演技に疲れ切り、路頭に迷っているときに、幸運にも、事務所から声をかけられ、稽古を積んでいくというわけだ。それも主役。14年間、主役になれない舞台で経験を積んだ脇役の女優が、主役の舞台稽古を積むうちに、生き生きとした姿を取り戻す。

14年間、間近でずっと主役を見てきた。「主役の努力を知った」「主役に求められるレベルを肌で学んだ」「自分に足りないものを悟った」「未熟な自分を思い知った」 そうして、長年の経験で培ったことが活きる時がやってくる。


yoshida41.jpgひっそりと事務所に所属し、こっそりと舞台稽古を重ねる。脇役しか与えられなかった女優が新しい事務所で成長を遂げていることを誰も知らない。そんな中で迎える大舞台。誰もが期待していなかった女優が、素晴らしい演技を披露するというものだ。観客はスタンディングオベレーションで喝采する。さいたま国際マラソンでの激走には、そんな比喩表現を用いたくなる。

まあ、そんな比喩表現は、さておき、"本当の自分を知った"吉田香織と分かち合える人物との遭遇が、奇跡のドラマを生む最大の要因となったことは間違いないだろう。

成長=悟り

5度の移籍の果ての人間不信感。吉田は、病気になりそうだった。もはや、「信じることができる人はいない」そんな思いが、頭を占めるようになっていた。だが、両親の愛情を一身に受けて育った吉田は、人を憎むことはしないのではないだろうか。

それは、インタビューでも終始、人を恨むような言葉は一度も出てこなかったからだ。いや、「全てを悟った」今だからであり、「苦い経験が私を育ててくれた」と感謝の念さえ抱いているような気がする。

所属先を失い、走る機会を失った吉田は、いろんな人と会った。旅行もした。その間の気持ちは「これ以上走れない」という疲弊感、「もう走らなくてもいいんだ」という安堵感が複雑に交錯していた。そんな吉田は、ランナーとしてではなく、人として、様々な土地を訪れ、今までとは、違う視点で世界を見て、人と話した。


yoshida40.jpgすると、吉田は、自分が"ちっぽけな存在"でしかないことに気づく。「私からランニングを取り去ったら、何が残るのだろう?」と自分に問いてみる。予想通り、残るものは少なかった。残ったものは、生まれ持ったものばかり。「私は、10年以上もの間、何をしてきたのだろう」残念に思う以上に、悔しさがこみ上げてくる。

「人に頼って生きてきたからではないか」「人に合わせて生きてきたからではないか」「結局は、自分の問題ではないか」と自問自答の末に答えを出した。

タイミング=運命

そんな気付きがあってこそ生まれる「私が生まれ変わるには何をしたらいいのだろう」という"前向き"さ。その気持ちの出現があった時に出会う場所。そして、運命の人。それが、創芸社であり、社長である吉木である。

(ここでも、引用したい「タユムコトナキナガレノナカデ♪♫」のフレーズ)

弛まぬ時の流れに 今♪
私は何を思い 何を見て♪
何を感じながら 生きるだろう♪
恐れること それすら 沈み込める♪
全て愛し続けよう♪

新たに始まる第6のステージに、期待と恐怖が入り混じるのだが、どん底を経験した吉田はこう誓う。


「恐れる気持ちを沈み込め 全て愛し続けよう!」
これから出会う人の全てを

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この心の変化が「第2話で記述した現在の吉田香織という人間像を生むことになった」のではないだろうか。

渡り鳥・吉田の心の成長と"ドンピシャリのタイミング"で創芸社に就職し、吉木と出会うのは「何の力なのだろう」と思わざるをえない。

-続く-

<第6話> ① 吉木の作戦


<第1話>から読む

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