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弛むことなき旅路の果て 吉田香織に送るレクイエム➄

yoshiada_title_2.jpgのサムネイル画像<第4話> 暗雲の中で想うこと


"今度こそ"の想いとは裏腹に待ち受ける現実

惑う吉田を見かねて救いの手を差し伸べてくれた人がいた。谷川真理を指導してきた中島氏である。

谷川真理は、普通のOL市民ランナーからオリンピック女子マラソンの日本代表・補欠選手まで上り詰めた異色のランナー。吉田は、美しい容姿とダイナミックなフォームでファンを魅了してきた谷川に憧れはあるし、尊敬の念すら覚える。その谷川と同じチームに入って、「谷川さんと仕事をしながら一緒に走れる」と思うと胸が踊った。移籍することに迷いはなかった。


yoshida32.jpg就職先はハイテクスポーツで、所属はアミノバイタルAC。在籍中は、ゴールドコーストマラソン優勝、シカゴマラソン8位(日本人トップ)、ホノルルマラソン3位など、海外で成績を残した。

しかし、やらなければいけないことは、競技優先ではないこともある。カンボジアのマラソン代表を狙う猫ひろしのペースメーカーを務めたりもしている。しかし、マラソンの日本代表選考レースでは、ことごとく失敗しているのだ。

「肝心なレースでは結果が出ない」トレーニングやレースなどのサイクル(プランニング)の問題だった。そこには、ランニングチームといえど、スポンサーを大事にする会社組織の中の一部門という考えが存在した。そんなこともあって、当時の吉田には、消化しきれない不満が累積されていく。

「何のために走っているのか?」降りかかる現実に、自問自答を繰り返す日々。こんな状態に疲れ果ててきた頃、知らぬ間にドーピング事件に巻き込まれていた。真相は吉田にも明かされない。信じていた人に裏切られ、商品としてしか扱われていなかったことを知った。ここでの終止符だった。


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ボロボロになる"心とからだ"

下される出場停止処分。周囲から注がれる冷ややかな目。この時こそが吉田にとっての最大の試練だった。自分をこの状況に置き換えることを想像しただけでもゾッとする。

時が経ち、吉田が元気を取り戻しつつあった頃、救いの手を差し伸べてくれた人がいた。「今度こそ」と思う一方で、競技は半分諦めていた。「まともに働き、空いた時間で走りたい」それで十分だった。しかし、待っていたのは、約束とはかけ離れた現実だった。「またしても・・・」何を信じて生きればいいのだろう。もう"何がなんだかわからない状態"に陥っていた。

吉田の心は、5つの所属先を渡り歩くほどに、ボロボロになっていった。まるで"階段を転げ落ちる人生"を歩んでいるかのように。「弛んでいく"時の流れ"に抗う気力が萎えていく」そんな自分を傍観することしかできない自分がいる。人生で初めて経験する無気力。そんな己の無力さに嫌気が差す日々が訪れる。


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重なり出す歌(曲)

この頃の吉田には、次へと渡り飛ぶ元気などどこにも残っていなかったのではないだろうか。こんな吉田の競技人生に合わせるように、頭の中で流れ出す曲がある。

『タユムコトナキナガレノナカデ♪♫』

知る人ぞ知る『いきものがかり』の名曲である。吉田香織の生き様が、この曲に重なりだす。弛むことなき流れの中で、吉田香織は生きてきたし、これからも生きていくはずだから。

(歌詞を引用させてもらう)

あたしの想いよ 風に乗れ♪
今すぐに 知らぬうちに ゆけ♪

-実業団チームに入った頃は、追い風に乗って進んでいけると思っていた。コーチの言う通りに練習していけば「勝手に強くなれる」と吉田は信じていた-

届いた雲の中の言葉♪
うっすらとわかりかけた自分♪

-ハードなトレーニングの連続。結果を出さなければいけない立場。欲望が渦巻く世界には、次第に暗雲がやってくる。理想と現実のギャップ。「そんな簡単な世界じゃない」と吉田は思った。現実の厳しさに打ちのめされるにしたがい、本当の自分に気付き始める-

日々の脆さに半ば諦めかけていたのは♪
浮ついた私の心で♪
何かに捕まる私の弱さはもう沢山♪
飾らない強さを纏うわ♪

-思うような走りができない日々。度重なる故障。心が折れるようだった。歳を重ね、その原因が自分にあることを知っていく。何かに頼っていては駄目だと思った。「飾らない本当の強さを身につけよう」と吉田は誓うのだ-

行き交う人の流れに逆らい♪
今 私は何処へと向かうのだろう♪
徒然なる夜には 月明かりの中で君を思い出そう♪

-吉田の競技人生は、挫折を繰り返しながら、尻つぼみのように萎んでいく。そして、本当の自分と分かり合える人を探す"行く宛のない旅"が始まるのだ。後退しながら飛行を続ける渡り鳥に、もはや見向く者など誰もいない。進展がない暗黒の世界で、光を探す道を歩む吉田-

「本当の自分と分かち合える人」を思い焦がれて・・・

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それが、たったの1年半前までのこと。"奇跡"と呼ぶ理由はそこにある!

-続く-

<第5話> どん底からの再生


<第1話>から読む

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