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シューズ職人「三村仁司」を紐解く❶

<第一話> 有森裕子との秘話


 三村仁司66歳。シューズ作りの名工である。

 三村が作ったシューズを履いて、輝かしい成績を残したアスリートは数知れない。
 有森裕子がバルセロナとアトランタオリンピックで銀と銅メダルを獲得すると、三村仁司②.jpg
 高橋尚子
と野口みずきが、シドニーオリンピックとアテネオリンピックで、
 たて続けに金メダルを獲得した。奇跡に近い快挙だ。シューズ作りの名人として、
 陸上競技とマラソン界で、もはや、その名を知らない人はいない。

 さらには、野球のイチロー選手やサッカーの香川選手など多競技に渡って、
 シューズを作っていることでも有名。マラソン競技にとどまらない活躍を見せている。

 最大の特徴は『選手からの信頼』がとにかく厚いことだ。それはなぜか?

   -- インタビューを通して解明してみた『その理由』を このコラムで皆様にお伝えしたい --

 選手は、勝ちたいがために、三村のシューズを求めて、今も昔も、三村が働く研究所に訪れる。
 脚部アライメント(脚長や足長、関節の可動域など)や足型(足指や土踏まずなどの形状、足幅など)の
 測定を行うためだ。職人三村は、選手の「脚」と「足」の特徴を掴み、シューズ作りに活かす。
 (ここでは『脚と足』を敢えて使い分けたい)

 作成するシューズは、選手の脚(足)の状態と本人の要望にもよるが、「走り込み用」「スピード練習用」
 「レース用」「矯正用」と多種に渡る。シューズのタイプは同じでも、インナーソールをそれぞれ用意したり、
 アウトソールやミッドソールの厚みを変えたりする。

 左右の脚の長さが違えば、厚さで調整し、足の大きさが違えば、シューズの三村仁司⑦.jpg
 大きさで対応する。「目指す大会」「目標とする記録」「練習内容とプラン」
 「その準備に当てられる期間」などの情報とタイミングで、
 どんなシューズを用意するかを瞬時に判断しなければならない。
 それもmm(ミリメートル)より小さい値で調整する世界である。

 三村の頭には、何千人もの足を見てきたデータが蓄積されており、
 パターンは、いったい何通りあるのだろうか。想像もつかない。

 そんな過程を踏んで作るシューズには、一貫した三村のこだわりがあるのだ。
 それは、アシックスで働いていた時も、アディダスのシューズを作る現在も変わらない。

 私が知る一つのエピソードを紹介する。三村のシューズ作りの本質を理解してもらえるはずだ。

 有森裕子がマラソンでタイムを伸ばしていた頃のこと。新しいシューズを作ってもらうために、ある日
 彼女は、当時、三村が働くアシックス研究所に出向いた。脚部アライメントと足型の測定をする前に、
 彼女は「私の足に合うシューズを作ってください」といつも通りに頭を下げる。

 すると、三村は、「お前の足を、俺のシューズに合わせるんだ!」「勘違いしたらあかんぞ」と返したという。
 知る人ぞ知る二人の会話である。

 三村は知っていたのだ。有森の「足と脚を変えないと世界とは戦えない」ことを。
 世界を目指す有森の意気込みを感じた三村の決意である。
 一種の賭けだったのかもしれない。「俺の言葉の意味を理解できる選手なのかどうか」という。

 勝負の世界にやさしさは要らない。三村の『考えさせる教育』だったのだ。

 オリンピックで戦うために、小出監督が有森に課した練習は、おそらく想像を絶するハードな内容だった
 であろう。三村が用意したシューズで脚(足)を矯正し、故障を最小限に抑え、練習を継続していく。
 綱渡りという表現がふさわしい毎日だったはず。

 マラソンのトレーニングとは、脚を鍛え、身体の中身を「マラソンという過酷な競技」に耐えられる高い
 レベルに押し上げていく作業。継続できなければ、そのレベルに達することは絶対に不可能。
 脚が悲鳴を上げたら、終わりなのである。

 ランニングは、地面から反発をもらわないと進まない。
 つまり、シューズは、地面と人間を仲介する役割を担う最も大切な道具である。
 身体の一部と言っても過言ではなく、世界に挑むには、職人技が必要なのは、言うまでもない。

 そんな究極の職人技を習得できたのには、もちろん理由がある。年月もかかっている。
 決して、簡単な道のりではなかった。
                                            (敬称略)
 続く   <第二話>シューズへの想い

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